この記事では富士フイルムの強みについて、図解を使いながらわかりやすく解説します。
富士フイルムは写真フィルムのイメージが強い企業ですが、近年は医薬品や化粧品など一見するとフィルムとは関係のないように思える市場で活躍する多角化企業です。
特に医療分野であるヘルスケア事業においては、
2031年3月期の売上高を2021年3月期の3.1倍である1兆7500億円規模に伸ばす
ことを発表するなど総合ヘルスケアカンパニーへの転身を進めている今注目の企業であります。
以下のような人におすすめ!
- 富士フイルムに就職したい。
- ヘルスケアを軸とする企業で仕事をしたい。
- 富士フイルムの強み、技術力を知りたい。
月に5万人以上の就活生に読まれる当サイト運営者トシが『富士フイルムの強み』を紹介しますよ!
データは以下を参照しています。
- 富士フイルム 中期経営計画「VISION2023」 2021年4月15日
- 富士フイルム 決算説明会資料 2021年3月期
- 富士フイルム 事業概要 2021年3月期
- 富士フイルム 統合報告書 2020年3月期
- 富士フイルムグループの成長戦略 2019年9月
- 富士フイルム サステナブル・バリュー・プラン 2017年8月
- 就職四季報
- 会社四季報 業界地図
さらに、日経ビジネスや日経XTECHなどのビジネス向け経済誌から得た情報も加えながら、2つの強みについて詳しく解説していきます。
また、富士フイルムは今、何に注力する会社なのかについてもわかりやすく説明していきます。
富士フイルムの強み①写真フィルムの基礎技術を応用することで創り上げた、時代を捉える事業領域
富士フイルムの強みの1つめは写真フィルムの基礎技術を応用することで創り上げた、時代を捉える事業領域です。
富士フイルムの事業の歴史
富士フイルムは1934年、写真フィルムの国産化計画にもとづいて大日本セルロイドの写真フィルム事業を継承し発足しました。
大日本セルロイドは現在、ダイセルに社名変更している大手化学メーカーです。
当時、大日本セルロイドは世界で初めて写真フィルムの商品化に成功し世界トップのフィルムメーカーであったコダックとの提携を模索していましたが、
コダックの拒否回答
により自力での開発を決意したと言われています。
コダックとは…
- 1881年に設立されたアメリカの企業であり正式社名はイーストマン・コダック。
- 世界で初めてロールフィルムやカラーフィルムを発売した企業であり、世界最大の写真用品メーカーであった。
- 1975年には世界初のデジタルカメラを開発したが、写真フィルム事業に悪影響を与えるとの判断で商業化を見送った。
- 2000年以降のフィルム市場の急激な縮小により業績が悪化。デジタル化の波に乗り遅れたコダックは2012年に倒産した。
- 現在は事業を大幅に縮小し再出発。6万人を超えた社員は10分の1程度となっている。
フィルム市場の縮小で倒産したコダックとは反対に、積極的な事業変革により生き残った富士フイルムの成功事例は世界中の企業に学ばれています。
コダックに追いつくために技術開発を積み重ねてきた富士フイルムは、写真フィルムの需要がピークを迎えた2000年にはコダックと世界トップを争うまでに成長。
しかし、カメラのデジタル化の影響を受け、写真フィルムの需要が急激に縮小したことにより、
富士フイルムは2000年に2600億円超と会社の売上高の約2割を占めていた主要事業の消失の危機
にさらされます。
出典:富士フイルムグループの成長戦略 2019年9月
ここで富士フイルムは新たな事業基盤の構築に向け
写真フィルムで培った高い技術力を応用する
ため、以下のポイントで自社がもっている「技術の棚卸」を行いました。
- 既存の市場と新規の市場、既存の技術と新規の技術の組み合わせで各事業を検討する。
- 重要事業策定は「成長市場か」「技術があるか・市場への知識があるか」「継続的に競争力をもてるか」をポイントとする。
出典:富士フイルムグループの成長戦略 2019年9月
単に技術がある、市場のことを知っているだけではなく
「成長市場であり、かつ将来にわたり継続的に競争力をもてるか」
にこだわることで、時代を捉えた事業展開を行うことを徹底的に考え抜いた富士フイルムは2006年、化粧品事業へ参入。
写真フィルムとは、かけ離れた事業とも思える化粧品事業ですが技術的には以下のように多くの強みを活かせる共通点があり、
富士フイルムは機能性をアピールした独自製品で先行する他社との差別化をはかる
ことにより成功を収めました。
- フィルムの主原料は肌と同じコラーゲンである。
- 写真プリントの抗酸化技術を応用してシミや老化の原因を抑制する。
- 感光・発色に活用したナノテクノロジーを駆使することで成分を浸透・吸収させる。
また医薬品事業や再生医療事業についても、写真フィルムの基礎技術を応用することで市場参入を果たすとともに積極的なM&Aを行い事業変革を加速させていきました。
出典:富士フィルム 事業概要 2021年3月期
富士フイルムが創り上げた事業構成
富士フイルムは、
写真事業を通して培った富士フイルムならではの独自技術を活用する
ことで本業消失の危機を乗り越え、以下の世界屈指の事業構成をつくりあげてきたと言えます。
ヘルスケア
- 人々の健康に関わる「予防」「診断」「治療」の3領域で事業を展開する。
- 病院や患者だけではなく、すべての人が健康を維持、もしくは取り戻すためのソリューションを提供することで総合ヘルスケアカンパニーを目指す。
グラフィックシステム
- デジタル印刷分野において、画期的な製品を開発・提供し、世界の印刷産業の発展に貢献する。
- 印刷サービスに関連するさまざまな機器やサービスを提供する。
記憶メディア
- デジタル化・IT化の進展とともに、社会のさまざまな分野で増え続けるデジタルデータを保存・管理するためのストレージメディアやアーカイブサービスを提供する。
- 個人情報をはじめとする重要なデジタル情報をしっかり守り、効率的に運用していくための社会基盤構築に寄与する。
高機能材料
- 写真フィルム分野で培った精密塗布、機能性分子、製膜などの技術を生かして、ディスプレイやタッチパネルの材料、半導体やイメージセンサーの材料、機能性フィルムなど各種産業向けの機材を提供する。
- テクノロジーや社会の変化とともに発生する新たなニーズを先取りし、顧客企業と密接に連携しながら、人々の暮らしや産業構造をも変えるイノベーティブな価値を追求する。
オフィスプロダクト&プリンター
- 大手市場および中小規模事業所市場向けに複合機・プリンターなどのオフィス機器を提供する。
- 入出力業務ソリューションやクラウド・モバイルを活用したソリューション・サービスの展開を通じて、ドキュメントとコミュニケーションにかかわるお客様課題の解決に貢献する。
プロダクションサービス
- コンテンツ製作から加工・配送までを包含するグラフィックコミュニケーションの領域で、商業印刷分野におけるデジタル印刷機(プロダクションプリンター)や、印刷ワークフロー・ソリューションを提供する。
ソリューション&サービス
- さまざまな業種や業務の特性に合わせて、課題解決型のドキュメントサービスを提供する。
ドキュメント事業は完全子会社の富士フイルムビジネスソリューション(2021年4月に完全子会社化が完了し富士ゼロックスから社名変更)が担当しています。
フォトイメージング
- カラーフィルム、インスタントカメラから現像・プリント機器、カラーペーパー、写真プリントサービスまで、「撮影」から「出力」に至るすべての領域で商品を展開する。
光学・電子映像
- 独自の色再現技術による高画質が特長のミラーレスデジタルカメラ「Xシリーズ」などを提供する。
- 「FUJINON」レンズは、TV放送や映画制作、セキュリティー、製造ライン検査など、カメラが用いられるさまざまなシーンで活躍し、クリエーティブから産業まで、人々の活動を幅広く支える。
「技術の棚卸」により自社の技術を深掘りすることで写真フィルムの高度な基礎技術を自在に応用する力を獲得したことが富士フイルムの大きな強みであり、今後さらなる成長と新たな事業が創出が期待される企業です。
徹底的な技術の棚卸による写真フィルムの基礎技術を応用することで創り上げた時代を捉える事業領域が富士フイルムの強み
富士フイルムの強み②事業変革の成功経験が生み出した新事業創出マインド
富士フイルムの強みの2つめは、事業変革の成功経験が生み出した新事業創出マインドです。
2000年以降、写真フィルム市場が急速に縮小する中、「第二の創業」を掲げ、基礎技術の応用を積み重ねることで多角化を進めてきた富士フイルムは、
2001年3月期から2021年3月期の20年で売上高を1.5倍
に伸ばし、大きく成長してきました。
写真関連が売上の6割を占めていた写真メーカーからヘルスケアや高機能材料など幅広く取り扱う多角企業へと生まれ変わった富士フイルムは事業変革のモデルケースであると言えます。
この強烈な成功経験は
富士フイルムの風土に深く根付くことで新たな事業を創出し続ける企業マインド
となっており、2021年4月15日に発表された中期経営計画「VISION2023」では以下の方針を発表しています。
- 今後3年間、成長性や収益性の高い事業の研究開発や設備投資などに1兆2000億円を投資する。
- 2023年度にはヘルスケア事業の売上高を1.56倍、営業利益を1.83倍(2020年度比)とし、富士フイルムの最大の事業に成長させる。
出典:富士フィルム 中期経営計画「VISION2023」
富士フイルムの企業戦略
また、2021年3月に富士フイルムの助野社長(2021年6月29日より会長)は日経ビジネスのインタビューで
「3〜5年後に世の中がどのように変わっていくか見極めながら、どのタイミングで事業化すれば顧客に価値を提供でき、そのために今は何をすべきか常に議論している」
と話しています。
このように常に新たな成長を見据えて議論を重ねる企業マインドは、
他社には簡単に真似できない富士フイルムならではの強み
であり、富士フイルムはどのように社会環境が変わろうとも、乗り越えていける強さを持った企業であると言えます。
事業変革の成功経験が生み出した、常に新たな成長を見据えて議論を重ねる新事業創出マインドが富士フイルムの強み
富士フイルムと同じ日本を代表する医療機器メーカーでありながら、医療専業への道を突き進んでいるオリンパスについての記事を読み、比較することで富士フイルムの企業研究を深めましょう。
>>【オリンパスの強み】なぜ業界トップなのか?図解でわかる企業研究をご参考にどうぞ。
また医療機器業界の人気3社であるオリンパス・富士フイルム・キヤノンをさまざまなポイントで徹底比較した【医療機器メーカー】グラフでわかる業界研究!人気3社を徹底比較【特徴・動向〜年収も】もご覧頂ければと思います。
富士フイルムから内定獲得!イチオシの就活サイトを紹介
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まとめ|富士フイルムの強み
この記事では近年、医薬品や化粧品などフィルムとは関係のないように思える市場で活躍する多角化企業、富士フイルムの強みについて解説してきました。
また、富士フイルムは今、何に注力する会社なのかについても説明してきました。
この記事が富士フイルムの強みの理解に少しでもお役に立てたなら嬉しいです。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
また別の記事でお会いしましょう!