この記事ではデンソーの弱みについて、図解を使いながらわかりやすく解説します。
デンソーは日本を代表する自動車部品メーカー。
トヨタグループに属しながら、世界中の主要な自動車メーカーに部品を供給するメガサプライヤーとして非常に注目されている企業です。
クルマがエンジンの時代からEVなど電動の時代に移りかわる中で、CASEに注力するデンソーの問題点や将来の目指すべき方向性などについて、デンソーの弱みから見ていきます。
この記事は以下のような人におすすめ!
- デンソーに就職したい。
- 世界中の自動車メーカーと仕事がしたい。
- デンソーの弱みを知り、企業研究を深めたい。
月に5万人以上の就活生に読まれる当サイト運営者トシが『デンソーの弱み』を紹介しますよ!
データは以下を参照しています。
- デンソー 統合報告書 2020年3月期
- デンソー 事業説明会 2021年度
- デンソー 決算説明会プレゼンテーション資料 2021年3月期
- デンソー 会社案内パンフレット 2021年1月
- デンソー 企業サイト
- 就職四季報
- 会社四季報 業界地図
また、日経ビジネスや日経XTECHなどのビジネス向け経済誌から得た情報も加えながら、それぞれの弱みについて詳しく解説していきます。
「メガリコール」「FA」などの聞き馴染みのない言葉も、わかりやすく説明していきます。
デンソーの弱み①新技術への注力で生じる従来技術のほころび
デンソーの弱みの1つめは、新技術への注力で生じる従来技術のほころびです。
デンソーは以下の4分野に注力することを発表しています。
環境負荷の低減と高効率な移動の実現
- 地球に優しく、より快適に移動できる電動車両システムの開発に取り組み、ハイブッド車に欠かせない主要製品の高性能化や小型化、省燃費を実現し、世界中で生産している。
- 今後は車内のあらゆるシステムや製品をつなぎ、エネルギーを効率よくマネジメントすることでさらなる省燃費化や省電力化に貢献する。
デンソーはCASEの「E:電動化」に注力する
交通事故のない安全な社会と快適で自由な移動の実現
- 交通事故のない、誰もが安心・安全に移動できるモビリティ社会を目指し、品質と信頼性の高い安全技術の開発に取り組んできた。
- これまで培ってきたセンシング技術に加え、今後はAI・情報技術に磨きをかけることで自動運転技術の発展にさらに貢献していく。
- 創業以来変わらない品質へのこだわりを貫き、モビリティ社会の未来に確かな安心を届ける。
デンソーはCASEの「A:自動運転」に注力する
クルマ・ヒト・モノがつながる新たなモビリティ社会の実現
- クルマの所有から利用・サービス化へのシフトという大変革が起こる中、MaaS(Mobility as a Service:ヒトやモノの移動をサービスとして提供するモビリティサービス)事業に取り組んでいる。
- クルマに乗る人だけでなく、クルマを持たない人にも安心・安全、効率的で環境負荷の少ない移動手段の提供を目指し、新たなモビリティ社会の実現に貢献する。
デンソーはCASEの「C:コネクテッド」に注力する
社会・産業界の生産性向上に貢献
- 130の工場でのFA導入経験を活かし、お客様の多様なニーズに対応できるFAシステムを提案・提供し、モノづくり産業の発展に幅広く貢献していく。
- 農業の通じて世界中の人々に笑顔を届けるため、自動車分野で培ってきたモノづくりの知見やノウハウを活かし、農業分野に新たな価値を届ける。
デンソーはクルマに頼らない新事業の創出に注力する
出典:デンソー 統合報告書 2020年3月期
これらの新技術に注力することで自動車産業の100年に1度の変革であるCASE(ケース)をさらなる成長と捉え、また将来に向けた新事業創出の取り組みとしてFA(ファクトリー・オートメーション)と農業といったクルマに頼らない非車載事業にも取り組むことを表明しています。
FA(ファクトリー・オートメーション)とは…
- 工場における自動化のこと
- コスト削減・スピード向上・品質安定・ヒトの安全確保・人出でつくれないものの製作を主な目的としている
デンソーでは世界の130の工場でFAを導入している。
さらに2020年10月には「あたかも一つの屋根の下にいるかのごとく」をコンセプトに世界の130の工場をIoTでつなぐF-IoT(Factory-IoTプラットフォーム)を開発。
130の工場のデータを1つのクラウドに蓄積し、自由に活用することでモノづくりを進化させている。
出典:デンソー 統合報告書 2020年3月期
一方、今まで主力であった従来技術のガソリンエンジンなど内燃系システムは、CASEとは反対に縮小していくことを発表しています。
出典:デンソー事業説明会2021年度 企業価値創造に向けた成長戦略
従来技術のほころびが引き起こしたメガリコール
これにより経営資源(ヒト・モノ・カネ)を得られなくなった内燃系システムは今まで通りの品質を確保できなくなります。
それによって生じた従来技術のほころびは、2019年にデンソー史上最悪の品質問題(メガリコール)を引き起こすことになり、2021年3月度において、その賠償金は合計で約2900億円を計上することになりました。
品質問題(メガリコール)の概要
- 2019年、デンソーが自動メーカー各社に納入していた燃料ポンプに欠陥があると公表。100万台(メガ)を超えるリコールに発展した。
- 燃料ポンプの樹脂製インペラ(羽根車)がガソリンを含んで膨張、ポンプケースと接触し作動不良を起こし、最悪の場合エンジンが停止するおそれがある。
- 2021年3月でもリコールは拡大し続け、世界で1000万台以上が対象となっている。
このメガリコールの原因は、CASEなど新しい技術に注力するあまり、従来技術である燃料ポンプを軽視し、品質管理で手を抜いてしまったことにあると言われています。
この品質問題を受けて、デンソーは全社一丸で「品質のデンソー」を取り戻すと宣言しています。
出典:デンソー 統合報告書 2020年3月期
しかし、経営資源が十分に注げない従来技術分野で過去と同レベルの品質を確保し続けることは非常に難しいと思われます。
従来技術分野に関わるヒトが減るなかで、従来と同じやり方をしていては、従来できていたことができなくなることは当たり前のことです。
ヒト頼りでなく、仕組みの再構築による品質向上を進めることが、事業の縮小からくる従来技術のほころびに対応する手段と考えられます。
CASEなど新技術への注力で生じる従来技術のほころびがデンソーの弱みであり、世界中で1000万台を超えるメガリコールを引き起こした
デンソーの弱み②自動車頼りの事業構成
デンソーの弱みの2つめは、自動車頼りの事業構成です。
2021年3月期の決算を見てみると、売上高のほとんどが自動車関連であり、自動車以外の非車載事業は3%しかありません。
現代はクルマを持たない人が増えており、特に若者においては車離れが進んでいると言われています。
CASEが普及し「S:シェアリング&サービス」が一般的になると、その流れはさらに加速すると思われます。
そのような世の中の動きの中で自動車だけに依存した事業構成はリスクが大きく、現時点においてデンソーの弱みとなっています。
自動車部品世界1位のドイツを代表する総合電機メーカーのボッシュは自動車事業が約6割、産業機器事業や家電、エネルギー事業が約4割と自動車だけに頼らない事業構成をもっており、デンソーが目指すべき方向性であると言えます。
デンソーの新たな事業展開
この自動車依存の状況を脱するため、自動車以外の新事業の創出を目指すデンソーは、新たなビジネスとして農業に進出。
人頼りで生産性の低い農業を変える戦略を打ち出しています。
自動車部品で培った画像データ技術を駆使し、ロボットによる大規模工場の24時間操業で野菜を量産することを進めており、自動車に頼らない事業展開への動きを加速させています。
2021年現在で数十億円規模の農業分野の売上高を2030年をメドに1000億円以上を目指すと発表しており、世界の食糧危機などが問題となる農業を変える挑戦が続けられています。
出典:デンソー 統合報告書 2020年3月期
またFA(ファクトリー・オートメーション)もデンソーが新たな事業として力を注いでおり、デンソーのモノづくりのノウハウを他企業に展開し、サービスにより稼ぐリカーリングビジネス(継続的課金事業)につなげることがデンソーの弱みを克服する手段となります。
自動車頼りの事業構成がデンソーの弱みであり、自動車依存から抜け出すため、新たな事業創出を目指し農業やFAにも力を入れ始めている
デンソーの強みを解説した【デンソーの強み】なぜ業界トップなのか?図解でわかる企業研究をあわせて読むことでデンソーのことをより深く知ることができます。
またデンソーの企業研究を深めるために、採用大学・就職難易度・内定獲得対策について解説した【デンソーの採用大学】就職難易度・採用人数は?グラフでわかる企業研究もご参考にどうぞ。
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まとめ|デンソーの弱み
この記事では自動車部品メーカー最大手であり、世界有数のメガサプライヤーであるデンソーの弱みについて解説してきました。
デンソーの弱みの理解に少しでもお役に立てたなら嬉しいです。